平和憲法を守り、想いをめぐらし、子ども・若者と歩む
じんるいは むれ つながり たすけあい まもりあい わかちあって いきてきた。
これは、子どもたちにお気に入りの『ワニブタカレンダー』(Art.31)2022の、ページをめくると出会うことばです。
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2022年1月。日本子どもを守る会の創立70周年の年が明けました。
日本子どもを守る会は、児童憲章制定の翌年、制定と同時に折からの朝鮮戦争に伴う軍事化と民主主義の後退による憲章の棚上げと形骸化に抗議して、「児童憲章の完全実現」を求めて発足し、本年5月17日に70年目をむかえます。
児童憲章の完全実現、それは日本国憲法の理念である平和・民主主義・基本的人権にもとづく子ども観と子育てを実現すること、子どもの品位を尊重し、諸分野において子どもの権利を実現していくことにありました。ワニブタの言葉に翻訳すると、「ちからいっぱい たのしんで いきる こどもの いまが しあわせな みらいを つくる」ということになるでしょうか。
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昨年の児童憲章制定70周年のとりくみの中では、児童憲章を、憲法および国連子どもの権利条約と深く結び付けて理解していくこと、改めて《憲法・児童憲章、子どもの権利条約》に基づく取り組みを継承・継続していくことの意義が確認されました。
以上の視点に立ち、2022年の年明けに当たって見つめるべき最大の課題は、「憲法改正」の動き、とりわけ憲法第9条をめぐる動きです。
先の衆議院選挙で、改憲賛成議員が7割を超え、単独過半数を占めた自民党と岸田政権は、自衛隊および災害時の緊急事態条項を、憲法9条に書き込むことを軸にして改憲を実現しようとしています。すでに防衛費の増強、自衛隊と米軍との共同演習の強化などが進められ、有事に備えるという基地機能の増強は、専守防衛から集団的自衛権の運用へ、さらには敵基地への先制攻撃をも可能とする防衛力の装備へと進んでいます。
昨年8月に『はじめての防衛白書―まるわかり!日本の防衛』と題する30ページにおよぶ子ども(小学校高学年以上)向けの出版物が、防衛省・自衛隊から出されました。そこには、日本の安全保障を脅かしている中国・ロシア・北朝鮮の軍事力の増強の動きとそれに備える自衛隊のとりくみと装備が紹介され、憲法の下でも「自衛隊が国を守るために武力を行使することを認められている」と記しています。防衛力の増強によって他国が日本を攻めることを思いとどまるために「抑止力」が重要なのだと強調しています。
「抑止力」に頼ることにより、際限のない軍事拡大競争に陥り、軍事費と軍事産業が肥大化して国の経済と国民生活を歪めていくこと、教育や福祉や文化を縮小させ、国民生活に危機をもたらしていくことなどは、いっさい指摘されていません。軍事力に頼った「抑止力」が、結局のところ平和を脅かし、民主主義を危うくするものであるという歴史の事実と教訓に目を向け、想像力をたくましくして、憲法9条の改正がいかに国民の生命と生活を脅かす危険な選択であるかを訴える必要があります。
軍拡競争によって引き起こされる経済競争・国威発揚・競争による人材育成・・・をワニブタが心配しています。「かちまけばかり こだわっていたら こどもじだいが うばわれちゃうよ」と。
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《憲法・児童憲章、子どもの権利条約》に基づき、国内外の平和と人権・民主主義を重視するとりくみを子どもたち・若者たちに知らせ、憲法を守り平和に生きる権利を大切にするとりくみを、子ども・若者と共に発展させていくこと、それが70周年を迎えた日本子どもを守る会の基本課題であり、理想を失わない社会づくりへの道だと思います。
子どもたちが『ワニブタカレンダー』から見つけた大好きな言葉、それは「あそびは こどもの しゅしょく」です。
ワニブタが言う「こどもは あきるほどの じゆうな じかんのなかで じぶんをみつめ やりたいことを みつける」そうしたことをたっぷりとできる社会を実現し発展させていきましょう。そのためにも平和憲法は、絶対に守らねばならない日本の宝物です。
2022年1月1日 日本子どもを守る会会長 増山 均