私たち日本子どもを守る会は、創立以来68年間、日本における子どもの権利の水準を向上させるために「児童憲章」を大切にし、「子どもの権利条約」の精神に基づいて子どもの意見を聴き、子どもの最善の利益を求めて活動してきました。しかし今、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のなかで、子どもたちは生活と発達の危機にさらされています。
コロナウイルス感染防止のため、政府の要請により、全国一斉に小中高校及び特別支援学校の多くが休校となり、関連する児童館、図書館、教育文化施設、公園・遊び場など、子どもの発達に不可欠な施設のサービスが停止されました。また保育所や学童保育など、働く親と子どもに必要な施設は継続されましたが、感染防止の対策と支援が十分でないなど、多くの困難を経験してきました。
いま、緊急事態宣言が解除されましたが、「新しい生活様式」の制約と再びの感染拡大への不安の中にあり、子どもたちの日常生活は取り戻せていません。学校と一部のサービスが再開され始めましたが、活動再開のもとで、子どもの生活と発達の環境が悪くなり、不安と困難が拡大することがないよう、小中高校、特別支援学校、教育委員会、その他関係各機関には、改めて次の諸点への配慮を求めます。
1.さまざまな取り組みの実施にあたっては、子どもによく説明すると同時に子どもにも相談して、子どもの声を聴き、子どもの参加のもとで一緒に知恵を出しあって取り組むようにすること。
2.学校教育の再開にあたっては、学力の遅れの回復ばかりを重視することなく、学校生活への不安を抱えている子どもの心身の状態に十分に配慮すること。また、放課後学童保育に通う子どもの生活とのつながりを配慮し、学童クラブの指導員や保護者との連絡・協力を密にすること。
3.ウイルス感染防止のために取られている学級の少人数化を恒常的なものとし、教職員を増やして、少人数学級を実現すること。
4.ICT環境による学習環境格差が生じないようにすること。授業のオンライン化は慎重に行い、オンラインによる家庭学習の推進は行わないこと。
5.学習・教育面に加え、生活・心身の面でも、子どもの成長・発達が損なわれないよう注意を払うこと。特に、子ども同士の接触が避けがたい遊びやスポーツ、文化・芸術活動についても、工夫をしながらの実現をめざすこと。
6.新たな感染拡大防止のために、マスクや消毒液などを十分に確保し支給すること。感染したり、感染者の近くにいた子どもが、不当な差別を受けることがないようにすること。
7.子どもの虐待が助長されないよう、親に対しても、必要な支援を行うこと。休校している子どもの把握に努めるとともに、登校した子どもには一人ひとりの声を聴き、寄り添い、安心して過ごせるように配慮すること。
8.上記実現のために、関係諸機関の連携協力のもと、既存の施策・施設を柔軟に運用する
などの対応と工夫をすること。
ヒトは古来、相互に親密なコミュニケーションをすることによって、人間として豊かな生活・文化を築いてきました。子どもという存在は遊びや学びでの親密な交わりを通じて人間性を獲得していきます。人間になりゆくためには、親密なコミュニケーションを避けることはできません。しかしいま、新型コロナウイルスによって、ヒトが人間であり続け、人間の文化を保ち続けられるかどうかの岐路に立たされています。人間にとって、特に子どもにとっては極めて深刻な事態です。専門家の知見と私たちの知恵を結集して、「つながり」を実現する新しい生活を、子どもたちとともに考えていきましょう。
日本子どもを守る会(会長 増山均)