私たち日本子どもを守る会は1952年5月の発足以来、子どものしあわせの実現と健やかな発達を保障するために、一貫して日本国憲法と児童憲章の理念の完全実現を目指して歩み続け、さらに国連子どもの権利条約を重視して活動を続けてまいりました。
子どもたちを取り巻く現状は、児童憲章がうたった3つの基本理念(人として尊ばれる、社会の一員として重んぜられる、よい環境の中で育てられる。)すら、ないがしろにされているのが実際です。
私たちは「こども大綱」策定にあたっては、日本国憲法を遵守し、自由と民主主義およびすべての人々の基本的人権を尊重し、特に子どもの権利条約に定められた「子どもの権利」を実現し、子どもたちに「最善の利益」をもたらすものとなるよう、下記の諸点の実現について強く求めます。
1.こども大綱の中に児童憲章を位置づけ明記することを求めます。こども大綱案やこども基本法の中に「児童憲章」についての記述が全くみられませんが、現在も、各自治体の母子健康手帳の中に印刷・収録されており、日本の子ども・子育てにとって子どもの権利を伝える最も身近で重要な指針であり続けており、児童憲章を活動の指針としている児童福祉施設も多くあります。児童憲章の歴史的意義と役割はいまだ失効していません。児童憲章をこども大綱の中に全く位置づけがないままで良いのでしょうか。 児童憲章の価値とつないで、子どもの権利条約を生かしたこども大綱を作成してください。
2.貧困と格差の拡大が子どもたちの教育に大きな影響を与えることがないよう、憲法、児童憲章、子どもの権利条約に基づいて、高等教育も含めて教育費の無償化を目指すことを明記してください。
3.子どもの権利条約の実施の指針として、条約のみでなく、国連子どもの権利委員会が示すジェネラルコメント(一般的意見)と我が国の定期報告への総括所見を十分に尊重し、国連子どもの権利委員会から指摘されている「あまりにも競争的な」社会と教育のあり方を改善するための具体的な施策と計画を盛り込んでください。
4.子どもの権利条約および国連子どもの権利委員会から示されている最終所見や、ジェネラルコメント(一般的意見)を広く国民に知らせるために、それらの資料を無料配布してください。
5.子どもの権利条約の内容を子どもたちに普及するために、教育課程での学習の機会を位置づけ、そのための具体的手立てを検討してください。
6.子ども支援にあたる専門職の養成、教育・保育・療育・福祉・司法部門への配置、学校教職員の定数改善計画を含み、少人数学級の実現を考慮してください。
7.子どもたちが自主的に活動を企画し、自由かつ自治的に取り組みを展開できるための校外児童施設(児童館等)の増設と専門職員の配置を明記してください。
8.軍事費の増額ではなく、子育て予算の大幅増額を求めます。子育て予算を大幅に増やし、特に困難な環境下で育つ子どもの生活実態を把握し、児童福祉施設や相談機関を増やしその内容を充実させてください。
9.こども基本法と子どもの権利条約に記載された子どもの権利が実際に保障されているか検証するための独立機関(子どもコミッショナー、子どもオンブズパーソンや子どもアドボケイトの制度)を導入してください。
10.子どもの権利条約において認められている子どもの権利実現のためには、なによりも平和な国際社会の維持・実現が必要であり、憲法に基づいて平和な世界の実現に向けて国、人種、宗教、文化の違いを認め、世界の実情を正しく知り相互理解のもとに対話や議論をすることの大切さを明記し、内外に発信してください。
〝花には太陽を 子どもには平和を″
2023年10月21日
日本子どもを守る会